今年初めて読んだシリアルな小説らしい小説。桜博士として御母衣ダム建設時に荘川桜の移植に関わった笹部新太郎をモデルにした「櫻守」と年老いた孤独な宮大工が自らの仕事の集大成として故郷に自分が住むための堂を建てるという「凩」の2編。どちらも基本的には簡便なものが好まれる現代にあって古来の技、美といったものを大切にする人々の物語。「櫻守」は『さくら道』にこの本を書くときに水上勉が佐藤さんのところにも取材に来たと書いてあったのでちょっと興味があって読んでみたんだが、御母衣ダムの建設前後の様子や荘川桜の移植の様子が少しではあるが描かれていておもしろかった。