2008/12/10

沢木耕太郎 『危機の宰相』

危機の宰相なんて言われると今の首相のことかと思ってしまうがそうじゃなくてこれは「所得倍増論」の池田勇人の話。いかにして所得倍増論という発想が生まれ、それが理論、政策として発展していったかを池田、およびそのブレーンの田村敏雄、下村治を中心に描いている。これまで池田はただいい時期に首相になった、幸運だったのだと思っていたが、日本人が戦後復興という一大目標を達成した後安保問題などに迷走し始めた「危機」の中で、池田を中心にした一派が主導して「所得倍増」という国民的目標を提示してその実現の道筋をつけたということがよくわかった。

しかし角栄とか大平とかも池田内閣の中心的メンバーで池田にきわめて近い存在だったのに全然登場しなかったな。